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嬉しいお知らせです!

アダム・ザモイスキ著 『CHOPIN ショパン』(ショパン伝 原文は英語)、英米文学者の大西直樹さん(ICU名誉教授)との共訳で音楽之友社より出版が決定!

ザモイスキ家はショパンと親交があったポーランドでももっとも富裕な貴族。著者のアダム・ザモイスキはその末裔で、ロンドン在住の歴史小説家です。ショパン伝の他にも、『ナポレオン』『パデレフスキ』などの著書があります。

一口にポーランド貴族士族といっても、領土すら有していなかった零落士族から、ロイヤルファミリーと血族関係にあるマグナートといわれる大貴族に至るまで、家柄の優劣は極めて多様です。

その中にあってザモイスキ家はチャルトリスキ家、ラジヴィウ家、などと並び称される大貴族。ウクライナとの国境近くにZamoscザモシチという街があります。そこはZamoyski家によって作られた街で、それほどの財力を持つことを示しています。

ショパンの姉からショパン宛に送った手紙の中にも、ザモイスキ家の大舞踏会でショパンのマズルカが一晩中踊られた、ということが書かれています。。

著者アダム・ザモイスキは1949年NY生まれ、現在72歳。母はチャルトリスキ家出身“プリンセス”の称号を持ち、これ以上は望めないほどのやんごとなきお家柄のご出身といえます。

https://en.wikipedia.org/wiki/Adam_Zamoyski

ポーランドが共産主義で状態が悪かった両親の時代に国を出てアメリカに渡ったのでしょう。

このところエキエル版バラードといい、この伝記といい、翻訳づいている私ですが、ショパンの伝記を出版できる幸運をとても嬉しく思っています!

ことの経緯はといえば。。。

大西直樹先生は英米文学がご専門で、現在はアメリカ人詩人のエミリー・ディッキンソンの詩の研究を主に携わっておられ、と同時に、ばりばりのピアノ好きでピアノもかなりの腕前で弾かれます。。。。といっても、私はまだ聴いたことはないのですが。

この大西先生がご縁あって私の桐朋のショパンクラスの科目履修生となり?!?!(そもそもこれが異常なことではありますが。。)、ショパン学を学び始めたのでした。

これに至るにも訳があり、桐朋のピアノ科の小森谷先生や河村晋吾先生が間に入っているのですが、そこは割愛いたしましょう。

そしてすっかり「ショパン学」の虜になられた大西先生は、ふと、ショパンが日本では絶大な人気を誇る割には、現在日本に優れた正式な「ショパンの伝記」がないのでは?ということに気づかたのでした。

これは事実かもしれません。いまだに半世紀以上前に出版された、驚くほど情報が古い伝記が増刷を重ねて本屋に並んでいるのです。

逆に、よい伝記が発売されたのにほどなく絶版になったものもあります。

そこで大西先生は世界狭しと見渡され、このザモイスキのショパン伝が目に留まったのでした。それはもう英米文学がご専門ですから、半分ほど原文に目を通して、すぐにこの本が優れた伝記であることを見抜かれたわけです。

そうと知るや、行動が早い早いっ!

あっと思っている間もなく、翻訳を始められたのでした。

基本的に音楽は大西先生の専門外ですから、本の内容の中で、音楽関係やポーランド関係など、いわゆるショパン学の部分についてはご自身の領域を超えるため、私と共著で進めたいとお申し出を頂き、それでは喜んで!という経過でした。

かなりの大著で300ページにはなります。

ショパンに関する伝記の絶対的なリソースは二つ、まず「ショパンの書簡集」、そして「弟子たちの証言~弟子からみたショパン」です。

これらに加えて、ザモイスキは歴史小説家だけに、ショパンの周囲にいたドラクロア、ハインリッヒ・ハイネといった芸術家や詩人の日記、日常的にショパンの周囲にいた友人たちの日記や手紙など多種多様な資料をソースにしていて、興味深いショパンのプライベートライフにまで話が及んでいます。

それは例えば。。。ある日ショパンがパリのレストランに友人たちと連れ立って行き、生ガキを食べたとか。そのレストランは今でもパリにあります。

またショパンが人生でただ一度婚約まで考えて破断になったお相手のマリア・ヴォジンスカについて、処々の伝記には『伯爵令嬢マリア』とおとぎ話のように書かれています。

しかし実際は、マリアの家族は富裕な貴族ではあったにせよ、ヴォジンスキ家は『伯爵家』ではないこと、また平民出身でもショパンほどの天才であれば、諸説にあるような、家柄が不釣り合いで破談になった、という理由はあり得ないことが率直に述べられています。

ショパンを正しく伝えることができる書となるよう、音楽之友社の編集の田中さんとも協力しながら訳を進めていく所存です。

出版予定は、今年のショパン国際コンクールを目指してと音楽之友社は考えているようですが、日程よりも、推敲を重ねてよい訳になることを最重要課題にしたいと思っています。

新しいショパンの伝記に乞うご期待!どうぞみなさま、楽しみになさって下さい!


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