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ショパン全書簡『パリ時代下巻』(岩波書店)出版記念の記者会見が、online配信で行われました!

数日前に突然、ショパン全書簡パリ時代の下巻出版記者会見を前にして、翻訳者の関口先生からコールがきました。

なにごとかと思えば。。。

「記者会見の事前案内に、詳しく誰々が登壇すると書いていないから、これではよほど興味がある人でないと見ないでしょう。楠原さんは見ますか?」と仰る。

実はライブでなくても、その後もしばらくはネットで見られると聞いていたので、本当のことを言えば、後で見てもいいかなと少し油断していたのです。

それでお返事がしどろもどろになってしまいました。

「あの。。。はい、見る予定です、いえ、はいっ、見ます。」

私自身の予定を確認したところ、ライブ配信の時間に見られることがわかったし、関口先生からのコールによって、私の中で内容への期待がだいぶ膨らんだので、結果的にとても楽しみになりました。

稀にあることなのですが、今か今かと待っているうちに、肝心のその時間が来てみたら忘れて過ぎてしまったということ、みなさんはご経験ないでしょうか。

忘れもしないのは。。。恩師のバルバラ・ヘッセ・ブコフスカのお誕生日には毎年必ずコールをして、しばしおしゃべりを楽しむのが恒例になっていました。

毎年12月に入ると、4日が来るのを楽しみして、明後日だわ、明日だわ、と前日まではしっかりカウントしていたのに、肝心の4日の夜になったらコロリと忘れて寝てしまった!ということがありました。

今回も当日追い立てられて過ごしているうちに、うっかりして、気がついたら時間が少し過ぎていたのですが、とにかく拝見!

とても豪華な内容で、記者会見て退屈しないかしら、という危惧とはまったく無縁でした。

中でも特に。。。。

ショパンはじめ、ジョルジュ・サンド、リスト、ヒラー、ハインリッヒ・ハイネ、ベルリオーズ、その他当時のショパンと親交のあった人との書簡すべての訳者である関口時正先生は、「ショパンは孤独だった。ジョルジュ・サンドもおそらくそうだった。」というショパン像に言及。

ピアニストの海老彰子さんは「ショパンへの親しみや共感をさらに得る世界の開陳。」

ワルシャワから、ショパン国立研究所長Szklener氏は「ショパンの手紙は一種の暗号で、解読をしなければならない。」

と、それぞれに深い洞察を示して下さいました。

その他、注釈を翻訳した4名を代表して平岩理恵さん、ポーランド広報文化センター所長のマリア・ジュラフスカさん、岩波書店社長、元岩波書店勤務の編集者、ワルシャワからは国立ショパン研究所長のSzklener氏、それぞれが発売に行き着くまでの経過をたどって、動機、エピソード、困難だったことなどを述べていかれました。

これまでに出版された、「ショパンポーランド時代全書簡」「ショパンパリ時代前期全書簡」はともに、私にはなくてはならない本です。

立派なハードカバーが付いていますが、それがあると出し入れが面倒なので、なしにして(捨ててはいないが)いつでも読めるようにしています。

物語のように読むわけにはいきませんが、ショパンの曲を弾けば、ではその頃、どんな手紙を書いていたのか、どんなことが起こっていたのか、ショパンを取り巻く社交生活はどんな風だったか、などを調べる時に必ず目を通します。

大学の講義の資料にも大いに使っています。「ほら、この時ショパンはみなさんと同い年くらいでしょう?」と、曲にまつわるエピソードや、手紙の内容も解説しています。

よろしかったら、このブログをお読みの方も手に取ってご覧になりませんか?

フフ、きっと、数ページとめくらないうちにギブアップだと思いますよ!

そういう本なのです。ショパンの手紙の翻訳というよりも、これは本格的な研究書で、1通ずつのショパンの手紙文に膨大な量の注釈部分が付帯しているのです。

もし楽譜の下に、訳注が音符の量より多く書いてあったら、普通ピアニストたちは、なんてうざい楽譜かしら。。と呆れて弾く気も失せるというものでしょう。それと同じことがこの本にも言えて、普通に読もうと思っても読破することなどとても無理です。

本当は、この注釈こそが、その時ショパンは誰と何をしていたかが詳細にわかる情報で、ショパンを知る上での宝の山なのですが、それは限られた人たちにとってのこと。

読む用事があればこそ読める本で、用事がなければ読むのは困難です。

記者会見中に関口先生が翻訳について仰ったことがあります。

ショパンの手紙は、これまでも日本語版はあるにはありました。ポーランド語→英訳(アーサー・へドレイ訳)→日本語というダブル翻訳で、抜粋ですがコンパクトな、といっても厚さがゆうに6,7cmはある本が出版されています。

さっと手にとって簡単に読むにはとても重宝していました、なんてことを関口先生の前で言おうものなら、頭ごなしに。。。。

「あの本は捨てた方がよろしい。」

記者会見中にすらそう仰ったくらいです。

その翻訳はどういうわけでそうなったのか、ところどころ吹き出しそうな日本語になっているし、ポーランド人の固有名詞も多くが別の発音に変わっています。

グワトコフスカ→グウァドコフスカ

ヴォジンスカ→ヴォドジンスカ

ショパンの初恋の人コンスタンツィアと、婚約までしたマリアの苗字、これらはまだましな方で、ひどいのは元の名前がわからないくらいです。

原文から訳すことの大切さを説かれるのは、翻訳には必ず翻訳者の主観が入ることをご存知だからでしょう。関口先生の翻訳にも、普段の先生のお人柄や好みとの重なりが見え隠れします。

それでも、今回の「ショパン全書簡シリーズ」は、ポーランド語を知り尽くした関口時正訳という信頼が何よりもあります。

お値段が神々しいほどにお高いのは難点ですが、それでも、私の場合は手元に置きたくなる、いえ置かなければの一冊ではあります!📖

楠原祥子

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