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音楽祭5日目は『ウクライナの夕べ』でした。

ウクライナ出身ピアニスト二人、

マリア・ナロディツカと、ダニーロ・サイエンコによるコンサート。

これはもう郡を抜いて素晴らしかったです。

マリア・ナロディツカの自作の組曲『イネヴィタビリティズ(必然性)』は、バルトークを思わせるリズムが使われ、程よく緩急がついた曲でした。

シューベルト/リストの歌曲の編曲3曲のうちの2曲、『糸を紡ぐグレートヒェン』、『魔王』は有名ですが、『ドッペルゲンガー(影法師)』は初めて聴き、この曲は何だろう。。と思っているうちに終わっていました。歌詞と共に聴いて初めてより深い理解がなされると思います。

プログラミングとして、このような性格を持つ曲を真ん中に据えて、それから魔王へと進むのは深い意図があると読み取れます。『魔王』に子供を連れ去られる。明らかなメッセージ性があります。

今日のプログラム全体を通しても、魂の救いを得られる曲は、次のシューベルトの楽興の時から第2番のみ。

ウクライナの苦しみは、彼女のプログラミングにもう最大限に表現されているのだと感じました。

かわって二人目はダニール・サイエンコ。

サイエンコはもう世界的に名前が出ているピアニストで、やはり凄いなと思いました。

彼の選曲の中で特に耳目を引かれたのは、ウクライナの作曲家ヴィクトル・コセンコのエチュードでした。

1曲目からすぐにラフマニノフの音域、書法に近似していると感じました。もともとこのOp.8は11曲からなるエチュードで、後から聴いてみたところシマノフスキのエチュードOp.3−3と同じ書法のエチュードもあり、作曲年代も近いと思われます。これからこのコセンコの曲は弾かれるようになっていくのではないかと思います。

そして最後の曲、リストの『スケルツォと行進曲』。これはもう圧巻でした。当然この『行進曲』に「ウクライナよ、前進せよ! 前進あるのみだ。」という思いを込めたのでしょう。

ウクライナからは優秀なピアニストが多数出ています。またリビウは19世紀には音楽の要衝地で、音楽家にとってヨーロッパの東側の重要な拠点でもありました。

この音楽祭の音楽監督トカチェフスキの広い人脈により、非常に意義あるコンサートが開催されて、心から彼のオーガナイズ力に拍手を送りたいと思います。

ポーランドにとっては、隣国の戦争は他人事ではなく切実な思いがあるはずです。音楽の力で結ばれたウクライナとの絆。ウクライナに思いを馳せた忘れられない一晩となりました。

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