いよいよショパン国際コンクールが開幕
ワルシャワでは第19回ショパン国際コンクールが開幕しました。
友人や知り合いの方々ももうワルシャワに到着して、10月2日夜のオープニングコンサートを聴いて盛り上がっているようです。

そして今日、10月3日から第1次予選が始まりました。ライブ配信がありますので早速聴いてみました。
日本人のトップを切って午前のセッションの3番目には牛田さんが演奏。
実にきめ細かく、練られて完成度が高い演奏でした。素晴らしいとしか言いようがなく心を射抜かれました。選んだピアノはスタインウェイ。
演奏したのは、ノクターン作品62−1、エチュード作品10-1、ワルツOp.42、バルカローレOp.60。
ノクターンはやや叙情性に傾いていたかと感じましたが、冒頭の深いバスからの分散和音で、彼が音の響きに対してどれほどの高い美意識を持ち合わせているかがすぐにわかりました。それは単に上行形の分散和音をそのまま弾いたのではない。そのまま弾いたとしても魅力は十分なサブドミナントですが、その1音ずつ味付けを変えて、考え抜いた末に創り上げた響きでした。
聴く人によってはそこまで厳密に耳をそばだてないかもしれない。でもこの美意識を持ち合わせているかどうかで2次予選に進出できるか、さらにその先進んでいけるかが決まってくるのです。
再現部に入り、テーマがトリルによって再現される部分は、この世のものとは思えぬ格別な美しさ。天の響きが地上に降りてきたよう。
トリルを得意とするピアニストの筆頭はソコロフですが、それに勝るとも劣らぬ高速トリル。いえ、光速トリルというべきでしょうか。
エチュード10-1は、決して👀を見張るような速さではないテンポ設定で、しかし力強く、しかも精密を極めて弾き切りました。技術面に気を取られて忘れかけていた、このエチュードの壮大な世界をもう一度思い出させてくれた。終始へ導くポリフォニックな音の強調も斬新で、1音たりともはずすこともなく弾き切った。でも彼には、どうだっ!というひけらかしの顔色や動作は寸分たりとも見られず、
最後のバルカローレは、実によく練り上げられた演奏。隅々まで行き届き、しかも節度がある音楽作りで、どこを切り取ったとしても、バランスも響きも完璧。途中のドルチェ・スフォガートが来た時の、太陽の光が運河のさざなみに反射するきらめきは、もう日が傾き始めた夕陽のそれでした。もちろんピアニストが意図してのこと。そこからテーマの再現、コーダは格調高く、その精密度には舌を巻くほど。曖昧な音は1音たりともなく、すべての音に命の息吹を与えた圧巻の演奏でした。




順番こそ有利とは言えないポジションではありましたが、2次予選に進めることはまず間違いなく思えますし、こうなったらファイナルで協奏曲と幻想ポロネーズを聴けるのを祈るばかりです!
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。


この記事へのコメントはありません。