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年頭に誰でもが思うのは、生きること。今年はどう生きようかと。。。
元日には初日の出など眺めて、魂と心を清めたつもりになり、昨年一年溜め込んだ淀みを流して、生まれ変わったように、澄んだ心と清き魂を手に入れたつもりになるものです。
この『魂』『心』という言葉は音楽にもよく使われます。
音楽は、楽譜の状態では2次元のただの紙に書かれたおたまじゃくしでしかないですが、響きに変換すると、魂がやどり、心で動きをつけることができるようになります。
その代わり、魂が宿ると命が生まれるので、時間が経つといずれ消えていってしまう。それが生の音楽です。
音楽用語には『アニマートanimato』と『コン・アニマcon anima』があり、表情用語として頻繁に使われています。
アニマは魂。アニマートは英語のアニマルからもわかるように、生命がある状態。
長いこと私は、アニマートとコン・アニマはほぼ同じ意味だと思っていました。
生き生きと活性化させるという意味。従って、テンポもいくらか上がり、頬がバラ色にぱっと染まるように、音楽も明るさが増すと。
ところが。。。
1965年ショパンコンクールで5位入賞のピアニスト、エドワード・アウアーEdward Auerが、「ショパンに数多く出てくるcon animaは、“心を込めて”と理解しなければならない。」とインタビューに答えているのを聞き、もしかすると、それが正しいのではないかと思い始めたのです。
なぜかといえば。。。
例えばポロネーズ第1番Op.26-1の中間部のcon anima。こんなところが生き生きと活性化したらどう考えてもおかしい。
スケルツォ第2番のカンティレーナ部分も。もともとスケルツォだからしてアップテンポなのが、イタリアオペラのベルカントを模した部分にきて朗々と歌いたいのに、活性化せよとはなにかおかしい。
と、疑問に感じていた部分が多々あったのです。
しかし。。。
不思議なことに、他の誰もがコン・アニマとアニマートは同じ意味だと言い、かのヤシンスキ先生ですらがそう仰る。最高にご尊敬申し上げているにせよ、この件に関しては内心疑いをぬぐうことはできませんでした。
或る夏ポーランドで、2つのイタリア語の意味を確認する絶好の機会がめぐってきました。
グダニスクのスリコフスキ教授邸に滞在している時、近所に住むたいそう音楽好きなイタリア人紳士とお食事を共にし、聞いてみたのです。
やはり!
コン・アニマは、魂を伴って、つまり『気持ちを込めて』という意味だと仰います。アニマートとは意味が違うと。やはりそうなのだわ。そうよね、間違いない!
それでもスリコフスキ教授は、何十年も信じてきた意味が否定されてはすぐには移し替えができないよ。。と半信半疑の様子でした。
つい最近、生徒さんの吉川さんによい本を紹介して頂きました。
『よくわかる音楽用語のはなし』〜イタリアの日常会話から学ぶ Viva la musica! 関孝弘/ラーゴ・アンジェラ共著
うん、間違いないわ。そうですそうです!やはりここにもちゃんとそうある。
見かけは似ていても意味は別人・・・アニマートとコン・アニマ
宗教的な意味においてのアニマ、それは神から与えられた肉体の中心奥深くに宿る、永遠なる[魂]、[霊魂]を意味し、アニマは人間に限らず、物の核となる[もっとも中心にあるもの]を指す。
コン・アニマは、[魂とともに]ということで、魂は人間の一番奥深くにある心であり、単なる[心]ではないから、演奏の際には次のような意味になる。
『心の奥深くにある魂と交感して演奏して下さい。』
。。。とあります。
さらなる発見は、ただ『心を込めて』では足りないのだということです。
魂に触れるほどにさらに奥深く音楽しなさい。
con anima
なんという神々しさを感じさせる楽語でしょうか!
楠原祥子
 
 
 
 

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