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それにしてもです。。。。翻訳するということは長い道のりで、長い時間がかかるお仕事です。
当初今年の秋ころにはショパンバラード、ワルツ、エチュード、スケルツォ、ノクターンの5冊が日本語版になって、全音から出版の予定でした。
ところがコロナ。。。
翻訳にコロナがどう関係あるかって? そうですね、もちろん翻訳そのものではなくて、影響を受けるのは出版への道程です。
10月に予定されていたワルシャワで開催のショパン国際コンクールは丸1年延期となり、2021年10月に開催ですから、目標であったショパンコンクールを目指しての出版は、丸一年伸びることが許されます。
しかし、ポーランドの出版社PWMは、日本語版が2020年に出版されることを全世界に向けてアナウンスしてしまっているそうで、とにかく出版はマスト。しかし、5冊すべてまとめての出版はとても無理。
というわけで、比較的校正の少ない『バラード』と『ワルツ』が先行出版されることになりました。ワタクシ、バラード担当です。
なので、にわかにまた翻訳を再度推敲、5冊の共通部分の訳の決定などなど、翻訳に引き戻されています。
もう黄ばんでしまっている1970年に出版されたバラードの原資料譜についての詳しい解説書。
奇跡的に私はこれを所有しています。
いつどうやって、どこで手に入れたか、まったく記憶にないこの資料。
ワルシャワのどこかで買ったのか、どなたかポーランドのピアニストから頂いたか、これまで開いたこともなかったこの本は、今参考のために少し役に立っています。
この図は、ショパンの自筆譜から、誰かの写譜、印刷用清書譜、ショパンの校正があるかないか、ドイツ版はブライトコップフ社へ、フランス版はシュレザンジェ社へ、イギリス版はウェッセル社へ、校閲者の校正修正があるかないか、その流れを示す、人間で言えば一族の血縁図です。楽譜の類縁関係を表すもの。
楽譜の類縁関係???最初にその言葉を聞いた時は、それはいったいなんのこと?と頭に?マークでしたが、今となっては興味深く見ることができます。
でもこの「類縁関係」という言葉を探り出していくまでに、由来、継承関係、関連性、血縁関係など、それぞれの訳者が出した訳語を熟考していき、それはそれは長い時間が必要でした。
5人の翻訳を共通する部分をまとめるというのも容易なことではありません。一つの単語を取っても、意見がまったく分かれることもしばしばです。
言葉が持つ意味の強さ、与える雰囲気の差。それはそれぞれ訳者が、文脈の意味を総合的に理解して決定していかないといけません。
例えばポーランド語の或る一つの言葉『dwolnie』。この言葉は確かに理解の自由度高い言葉ではありますが、任意で、独自の判断で、独断で、恣意的に、と、これだけ訳者によって分かれたのです。
これをみんなで摺合せをして一本化することができるか。
というと、これはそれぞれの主張があるために困難を極めます。
 
他にも、「エキエル」という日本語表記を「エキェル」と変えたほうがよいという話が持ち上がりました。
Ekierは発音としては確かに「エキェル」で、誰も、え・き・え・ると読む人はいません。多くの日本人のピアノ関係者は、「エッケル」と発音しているように聞こえます。
はぁぁ。こうやって一つ一つ推敲していくと、いったいいつまでかかることになるのか。まだまだ先は長そうです。
 
 

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