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『子犬のワルツ』。MinuteWaltz、つまり1分ワルツの名称があるように、短いけれどもそれはそれは愛すべきワルツ!。小学生でも颯爽と弾いてしまいます。
えっ、そうなの?と知って案外驚くことは、このワルツはショパンが出版したほとんど最後の作品群の一つだということです。作品65チェロソナタがショパンによる最後の出版で、この曲はその一つ前、作品64です。
ショパンワルツ全曲を間もなく録音するにあたって、探求心がわき、子犬のワルツの演奏は時代によってどんな仕上がりだったのか・・・・?ということを知っておきたくなりました。
これほど愛される曲は、ともすればテンポ、ディナミク、リズムなどがスタンダード化してしまうのではないか。。。。?
時代やピアニストによっての差が少ないのではないか。。。?。
万人に愛される条件のワクともいうべきものがあって、いつの間にかワク内に定着し、ワク外の演奏はショパンではない!と排除されてきたのでは。。。。?
と危惧したのですが、 いえいえどうして・・・
『子犬のワルツ』、されど『子犬のワルツ』!なのでした。
演奏はその時代の風潮や流行を反映していることが、この小さなワルツを時代を追って聴くことでもよくわかりました。
 
まずショパンに近い時代の録音
これはやっぱり知りたいところです。ショパンの孫弟子くらいの子弟関係にあれば、ショパンをライブで聴いた師の口から真実が聞けるのですから。
●パウル・パブストPaul Pabst(1854-1897)
アントン・ルビンシュタインとリストに師事した19世紀のピアニスト。ショパンと同じ世紀ですものね!モスクワ音楽院でラフマニノフを教えたとあります。1895年にエディソン蓄音機用シリンダーで作成されたもの。よくぞ残っていてくれた!タイムスキップしたよう。
再現からなんともセンスのよい即興が入ります。
https://www.youtube.com/watch?v=h5Xlzay3rHw
 
●アレクサンデル・ミハウォフスキAleksander Michałowski (1851-1938)
ショパンの孫弟子として知られるけれど、実際は練習曲集を残したモシェレスとリストに師事したポーランド人ピアニスト。ショパンの弟子のミクリには後年レッスンを受けたようです。モシェレスもリストもショパンのライブ演奏に百々接しているのだから、せめてこのミハウォフスキの演奏にショパンの影響を求めても許して頂けますよね!
1905年の録音。この軽やかさ!即興の巧みさ。ショパンの即興もこんなだったのかなぁ。。。
クリアな音、粒立ち、濁りや染みはまったくゼロ。そしてとにかくインテンポをキープ。左手がワルツを運ぶ、運ぶ!まわる、まわる!
https://www.youtube.com/watch?v=iwfEkxGzjVM&list=RDiwfEkxGzjVM#t=17
さらにパラフレーズ化した録音はこれ。ショパン=ミハウォフスキの 『子犬のワルツパラフレーズ』
https://www.youtube.com/watch?v=spjNfk8usuI
リストの即興はきっとこの雰囲気だったのでは?子犬のワルツにドナウ川のさざ波をプラスしたようなイントロ。途中でちょっとよくわからないことになっているのもパラフレーズならでは??
現代のコンサートのアンコールでこれをやってくれたら、立ち上がって手が赤くなるまで拍手します!
 
次にいきましょう。今度はフリードマン
●Ignaz Friedman(1882-1948)。こちらユダヤ系ポーランド人の大ピアニスト。
https://www.youtube.com/watch?v=8PJqdkXDbSI
1924年の録音。だいぶ楽譜に忠実になってきて、スピード感はそのままに、ゆるやかなルバートが優美なラインを作り出します。ドレスの裾が、フワッフワッと旋回のたびにめくれるのが見えるかのよう。部分的に装飾して演奏に華やぎを加味し、ところどころ渦巻きが激しくなったり。。。これこそはフリードマン流!
 
ここまで聴くと、20世紀初頭までのピアノ演奏の主流が見えてきます。いわば第1次大戦頃までは、楽譜通りに弾いただけでは演奏としてまだ未完成で、即興を加えることが演奏の独自性の証明であり、その即興が独創的であれば、さらに評価が高まるという時代だったのでしょうね。
その2に続く

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